優秀な人がなぜ「痛い人」(イタイおやじ)になってしまうのか

リーダーシップ
  • 「痛い人」とは「感受性の低い人」
  • 人は「見たいもの」しか見ない
  • 「ダメ出し」されないから「痛い人」になる
  • 「ノーガード戦法」の勧め

「痛い人」とは「感受性の低い人」

過去の栄光の時代そのままに「今でも自分はイケてる」と思いこんでいたり、みんな辟易しているのに毎度自分自慢を繰り広げたり、自分をよく見せようと話をちょっと盛ってみたり、せっかく盛り上がろうとしている雰囲気に水を差す言葉を(意識せず)言ってみたり、面白くもない古くさい冗談を何度も何度も場を考えずに繰り返したり、ばれていないと思って嘘をつき続けたり・・・等々。

そのような人々を「痛い人」と呼ぶ。
要は、「痛い人」とは、相手の「違和感」反応に気付かない、「空気が読めない」ということであり、
感受性が低いということである。

感受性が高く、自分の言動に対する人々の反応をちゃんと理解できるのであれば、そんな言動をいつまでも取りつづけるわけがない。
気づかないので、改善できないのだ。

人は「見たいもの」しか見ない

人は、自然状態では、そもそも感受性に問題があるものである。

カエサルは「人は現実のすべてが見えるわけではなく、多くの人は見たいと思う現実しか見ない」と言った。

心理学でも、「確証バイアス」と言って、何かを観察する時、自分の先入観に合う情報ばかりを選別し受け入れることで自信を深め、自己の先入観が補強される現象がある。
かように、そもそも人は「見たいもの」しか見ない、感受性の低い生き物なのだ。

ちなみに、採用面接などで「人は5分も話せばわかる」と豪語するような人がたまにいるが、これまたおそらく感受性の低い人であろう。

5分で生じるのは単なる「人物仮説」であり、しかも多くの場合、自分の「先入観」「好き嫌い」「偏見」によって「ゆがめられたイメージ」であるということに気付いていないから、そんなことを言うのだ。

自分の偏見に気付いていない「痛い」面接者は、結局、自分の「好きな人(そしてそれは、自分に似ている人であることが多い)」を「良い人だ」と見て採りつづけ、会社は同質化していく。

「ダメ出し」されないから「痛い人」になる

自分の思考や行動のバイアスに気付き、「痛い人」にならないように改善できる人になるには、自分の力だけでは難しい(見たいものしか見ないので)。

そのため、他人に自分の見たくない「痛い」部分をきちんと「ダメ出し」してもらえなければならない。
そうでなければ一生その「痛さ」に気付けない。

偉くなったり、年を取ったりしていくと、昔はピカピカだった優秀な人が、どんどん「痛いオヤジ」になっていくのはそのせいだ。

若いうちは様々な先輩方にいじられる=ダメ出しされる。
それが、彼らの思考や行動を磨いていたのが、年齢を重ねて社会的立場を得ると、そのパワーや圧力への恐れゆえに他人から「ダメ出し」をされる機会がどんどん少なくなる。

「見たくないもの」は通常ネガティブなものだから、パワーを持つ人に告げるには勇気が必要であり、パワーを持つ側の人が高い受容性を持っていなければ、なかなか言えることではない。

大変偉くてお金もありそうな経営者が誰が見ても分かる貧相なカツラをつけて気づかない様子であったり(気遣いせねばならず、周囲は大変困る)、
華やかな経歴を経て政治家になった女性がいつまでも聖子ちゃんカットだったりするのは、きっと彼らは誰からも「ばれてますよ」「それ、もう流行ってませんよ」と言われることがないのだろう。

「ノーガード戦法」の勧め

これは別に、年を取るとか、偉くなるとかの場合だけに当てはまるわけではない。

顔が強面だったり、有力者の子息令嬢であったり、常にファイティングポーズを取っているような攻撃的な人であったり、異形のファッションをしていたり・・・他人からの「ダメ出し」(=ネガティブな痛い分のフィードバック)を受けなくなる要素は他にもたくさんある。

そもそもまず、そういう要素を自分が持っていること自体に気付かなければもうどうしようもないのだが、
もし自分に当てはまるものが少しでもあるのなら、
以降はなるべく「ノーガード」で生きることをお勧めする。

パナソニック創業者の松下幸之助氏は、大経営者になってからも、自分の批判をする人とあえて会って、
自分をボロクソに批判させたという。きっと、放っておくと痛い裸の王様になるとわかっていたのだろう。

自分が見たいものだけしか認識しない「幻」「誤解」の世界で心地よく生きていきたいと言うなら、
もう言うことはない。しかし、その世界は「現実」ではないので、結局、長くは維持できない。
他人が離れていくからだ。

「幻」の世界にどっぷりとはまった「痛い人」は、きっと離れていく他人の方が悪いのだと、怒りの地獄に陥る。「痛い人」は「よく怒る」ものだ。そしてその怒りがまた人を遠ざけていく悪循環。

それはほんとに辛い人生ではないか。「見たくないもの」を直視して生きる方が、まだ楽ではないかと思うのである。

Sowa Toshimitsu
Sowa Toshimitsu
故河合隼雄先生に憧れて臨床心理学を志したが、結局挫折して民間企業へ。 リクルート、ライフネット生命、オープンハウスなどで、一貫して人事や採用の責任者を担当してきた。現在、京都と東京の二重生活を送りながら、人と組織の可能性の最大化を支援するためなら何でもやるコンサルティング会社、人材研究所(詳細はこちら)の代表をつとめている。経営はまだまだ素人なので、手助けしてくださる方、絶賛募集中。好きなアーティストは尾崎豊、岡村靖幸、チャゲアスとちょっとやばい系。 著書に「知名度ゼロでもこの会社で働きたいと思われる社長の採用ルール48」(共著)「できる人事とダメ人事の習慣」「就活後ろ倒しの衝撃」

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