創造性はデスクを離れる勇気に訪れる―閃きの科学

人間力
  • 創造性とは無縁ではいられない
  • ネットワークの切り替えとうわの空
  • 考え過ぎないから思いつく―閃きのためにできること

創造性とは無縁ではいられない

私達は経験を重ね、立場が上がるにつれて、難しい問題への対処を迫られるようになります。「やる」から「考える」に仕事がシフトするのです。しかし、この「考える」ことも、論理的・収束的な思考の結果答えに辿り着くものばかりではなく、これまでの経験や、先行の事例からは解決策が得られないことが含まれています。時間や努力の量で解決できる問題から、次第に閃きや創造性が問われるようになってくるのです。
それでは脳科学は、どこまで閃きを明らかにしてきたのでしょうか。

ネットワークの切り替えとうわの空

「脳は寝ている時のほうが活発に活動している」「日常の何でもない活動の最中は、その3割ほどの時間を私たちはうわの空で過ごしている」と言われたら、驚かれるでしょうか。

このような時の脳の働きはデフォルトモードネットワークと呼ばれ、意識的に何かに取り組んでいる時に比較して、広範囲に脳が活性化し、記憶の取捨選択と定着を行ったり、高速にタスクを切り替えている(車の運転をしながらこの後の会議について考える等)ことが明らかになっています。

閃きは脳のメカニズムから考えると、この神経ネットワークの繋ぎかえと捉えることができる、と考えられています。しかし意識的に問題に取り組んでいる間は、先に述べたように活性化する脳の部位が狭く、この繋ぎかえが起きにくいのです。

頻繁にうわの空になる人は、創造性が高く問題解決にも長けていることが、研究から明らかになっています。

考え過ぎないから思いつく―閃きのためにできること

起業家の自伝などでは、「シャワーを浴びている最中に新商品が閃いた」「起き抜けにビジネスモデルを思いつき慌ててメモした」と言った記述はもはやお馴染みと言っても過言ではないでしょう。これらはきちんと脳のメカニズムにも対応した現象といえそうです。

閃きが生まれやすい状態をまとめると、
(1) まずは意識的に問題に取り組む
(2) 問題への取り組みを中断し、うわの空になりやすい状態をつくる
ということになるようです。

(1)はある程度脳内に情報が溜め込まれないと、ネットワークの繋ぎかえも起こらないため。(2)は散歩やシャワーを浴びるなど、何も考えない状態をつくりやすい、日常的な身体動作が最適なようです。

忙しい時やプレッシャーを感じている時ほど(2)の時間を意識的にとることが難しいように思えます。しかしそこで「優れた閃きこそが問題を解決するはず」と信じて、デスクの前を離れる勇気が必要なのかもしれません。

【参考文献】
Christoff, K., Gordon, A. M., Smallwood, J., Smith, R., & Schooler, J. W. (2009). Experience sampling during fMRI reveals default network and executive system contributions to mind wandering. Proceedings of the National Academy of Sciences, 106(21), 8719-8724.

Mason, M. F., Norton, M. I., Van Horn, J. D., Wegner, D. M., Grafton, S. T., & Macrae, C. N. (2007). Wandering minds: the default network and stimulus-independent thought. Science, 315(5810), 393-395.

祐司 佐久間
祐司 佐久間
Watson Wyattにて人事コンサルタント、面白法人カヤックの人事チームリーダーを経て現在は大学院で心理学を専攻中。 「データに基づいた人事」をテーマに、ウェアラブル端末やビッグデータ、生理情報、バイオフィードバックなどの切り口からこれまで企業では用いられていなかったデータを組織に活かす方法を模索している。

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