辞めさせる優しさ

リーダーシップ
  • 「辞めさせない」は経営者のエゴ?
  • 「残す」ことによる不幸
  • 突然の辞令……そこで分かった自分の可能性
  • ショック体験は人を変える
  • 名句「かわいい子には旅をさせよ」

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リーダーシップ、それは「人を巻き込み動かす力」。ここではこのリーダーシップを、さまざまな要素に分解して考えていきます。今回は、「人を辞めさせる」という観点からリーダーシップについて見ていきましょう。

経営者など組織を統率する人物にとって、自分と一緒に長く仕事をしてくれた社員には愛着がわくものです。親心まで感じ、「こいつは自分が面倒を見てやらなければやっていけない!」と考える経営者も珍しくありませんし、自然な感情だと思います。しかし時として、辞めてもらう決断が必要なこともあります。

「辞めさせない」は経営者のエゴ?

経営者の中には、社員を辞めさせることを嫌がる人がいます。これは社員を思いやっているように見えて、実は経営者のエゴであることも少なくありません。経営者の口からは、「自分のもとを離れたら、こいつは他の会社でやっていけない」「この人物を理解できるのは自分しかいない」「人を大切にしたい」等の言葉が出てきます。しかし本当にそうなのでしょうか?「自分のもとに据えておきたい」という執着や、「リストラをする経営者だと思われたくない」という見栄、「辞めさせられた人から恨みを買うのが怖い」という恐怖……
辞めさせないという背景には、こうした経営者のエゴがあるのではないでしょうか?

「残す」ことによる不幸

辞めさせないというのは一見優しい経営者のように見えますが、かえって社員の可能性を狭めてしまうこと、また会社にも悪影響であることが往々にしてあるようです。
会社にとって必要な人材は、組織の規模や会社の成長フェーズによって変わってきます。会社の創業期には力を発揮してもらえた社員でも、会社が大きくなるにつれて力を発揮できなくなるケースはしばしば起こります。大きな会社では異動という手段もありますが、多くの会社ではそういう訳にはいきません。「残す」ことで、本人も組織もパフォーマンスが低下する。これは決して望ましい状態とはいえませんね。

リーダーは組織の最適化を図るという使命がありますから、「辞めさせたくない」という個人的なエゴを捨て、時に全体最適を図る「決断」が必要になってくるのです。

突然の辞令……そこで分かった自分の可能性

私の経験をお話ししましょう。私は新卒でリクルートコスモスに入社し、最初の営業では新人賞を狙えるところまで来ていました。あと3ヶ月成果を出せば!そう意気込んでいたある日、突然人事部への異動を言い渡されたのです。ショックのあまり、退職することすら考えました。しかしその時、人事からこう言われたのです。「絶対人事に向いているから、騙されたと思ってやってみろ」と。
自分には見えていなかった強みが、おそらく人事は見えていたのでしょう。
半べそ、渋々人事で仕事を始めました。そして始めてからわずか1ヶ月で、人事にはまり、気がつけばこの道で独立、天職だと思う程はまっていたのです。

あくまで肝心なのは、メンバーの人生を思いやること、自身の可能性を気づかせ、自立の道を優しく送り出してあげるのです。
えてして、人は自分のことをよく分かっていません。他人からは見えているものの、自分では見えていない部分があります。これはコーチングをさせていただいている中でもよく感じることです。たとえ猛烈な抵抗を受けたとしても、可能性を信じて旅立ちを促すこと、それこそが本物のリーダーのとるべき道なのではないでしょうか。

ショック体験は人を変える

会社からクビを切られたことで、人が大きく成長するという例は枚挙に暇がありません。
その中で最も有名な例はスティーブ・ジョブズでしょう。皆さんもご存知の通り、彼は30歳の時に当時のアップル社の経営陣と対立し、創業者にも関わらず会社から追い出されてしまいました。その後、新たにいくつか会社を立ち上げた後、アップル社に舞い戻りました。それからアップルを率いるリーダーとして、iMac、iPod、iPhoneにiPadなどといった大ヒット商品をいくつもプロデュースしたのは周知の通りです。
彼はスタンフォード大学での卒業式のスピーチで、辞めさせられた当時のことを振り返り「本当に辛い出来事だった(it was devastating.)」と述べています。当時の彼にとっては耐え難い経験でしたが、それを乗り越えて新たな挑戦を行い、人々の生活を変える画期的な商品を生み出したのです。

心理学者のチクセントミハイは、精神がある物事に完全に集中・没頭している状態を「フロー状態」と呼んでいます。大成功、あるいは大失敗により、頭が真っ白になって呆然とする状態、何も考えられない程の大きな衝撃を受けた状態、「頭をガーンと殴られた」ような状態も、一種のフロー状態です。このような状態を経験することで、それまで自分が持っていた先入観や偏見、こだわりなどが取り除かれ、価値観が変容していくことがあります。フロー状態に陥るような経験は、人を大きく成長させる可能性を秘めているのです。
「辞めさせるのはかわいそうだ」といったお情けは、このように本人を根本から変えさせる転機を奪っているということもできるのです。

名句「かわいい子には旅をさせよ」

かわいがって育ててきた社員を手放すというのは、経営者にとっては辛いもの。本人にとっても、一時的には失意の底に落とされることになるかもしれません。しかし、組織の今後にとって、そして本人の人生にとって最善な道は何かを考える、そして実行に移すというのがリーダーの努めなのです。
「かわいい子には旅をさせよ」ということわざがあります。かわいい社員であるからこそ、自分の手元から放ち、世間に送り出す決断もまた、優しさのひとつなのです。

yuma
yuma
SOOLファウンダー。異彩人材を次々に惹き付ける独特の声、才能を引き出す不思議な眼力を持ち、人間をこよなく愛する3児のパパ。子供達があこがれを抱くかっこいい大人で溢れる世界を作ることを目指して旅を続ける。同じ志とパワーを持つ伝道師の発掘と育成に命を注ぐ。

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