体調のブレは判断のブレ?「一貫性」はカラダから

人間力
  • リーダーシップとは一貫性と見つけたり?
  • こんなにも簡単に妨げられる一貫性
  • リーダーは毎日天ぷらそばを食え?体調を一定に保つこと

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1. リーダーとは一貫した人と見つけたり?

「リーダーシップは、賢さに支えられるものではない。一貫性に支えられるものである。」
ドラッカー『プロフェッショナルの条件』より

リーダーシップにおける一貫性の重要さは、古今、様々に指摘されてきました。

口で言ったことを、きちんと実行する。
相手によって、あるいは同じ人に対してもタイミングによって態度を変えない。
状況によって判断基準を変えない。
などなど。

その効果は、信頼感の醸成を第一に挙げる人もあれば、メンバーの「リーダーだったらこう判断するはず」という思考が自律的な判断を育むといった育成効果を指摘する向きもありますが、一貫性が重要であるということは疑問の余地のないところと言って良いかと思います。

それでは私達は日常どれほど「一貫している」のでしょうか。
「一貫性」を保つために、私達は何ができるのでしょうか。

行動経済学という分野を切り開きノーベル賞を受賞したダニエル・カーネマンをはじめ、科学の世界は近年、いかに人間が不合理な存在か、ということを明らかにしてきました。

一貫性についても然りで、我々自身が思っている以上に我々は一貫していない、という研究も数多く提出されてきています。

2. こんなにも簡単に妨げられる私達の一貫性

米国の心理学者、ジョシュア・アッカーマンとジョン・バーグが行った実験では、就職のための面接で求職者が面接担当者に渡す履歴書を次の三つのグループに分けました。

(1)普通のコピー用紙に印刷した履歴書のみ
(2)同じ紙に印刷した履歴書を「軽い」クリップボードに挟んだもの
(3)同じ紙に印刷した履歴書を「重い」クリップボードに挟んだもの

その結果、面接担当者は重いクリップボードに挟んだ履歴書の求職者たちを高く評価してしまいました。

クリップボードの有無や重さで判断が変わるなんてバカバカしい、と思われるかもしれません。

しかし「温かいコーヒカップを持っていると、対話する相手の人柄も温かいと判断しやすい」という実験結果もあります。

同種の実験で、同じお笑い番組を見る場合でも、鉛筆を前向きに咥えて口をすぼめて見た人と、鉛筆を横向き咥えて口角を上げて見た人では、後者の方が「面白い」と感じやすいそうです。

また、不快感をもよおすビデオを見せられたグループは、そうでないグループに比べて、ある罪を犯した人に対して、どれだけの罰を与えるべきか、という判断を聞くと、前者は後者に比べてより重い罰を与えるべき、と主張するのだそうです。

以上のような実験結果はすべて無意識下での効果であり、気をつけたからと言って直るわけではない、という点が恐ろしいところです。そしてこれらの研究結果がビジネスに則して語られる際には「だからこうやって他人をコントロールしましょう」という論調が多いように見受けられますし、もちろんそのような活用法もあるでしょう。

しかし目先を転じて、自らの一貫性を保つために、私達が学ぶべきことはないのでしょうか?

3. リーダーは毎日天ぷらそばを食え?体調を一定に保つことの意味

そこで私が思い出すのは、以前NHKの「プロフェッショナル 仕事の流儀」で見た、サントリー社のウィスキーのブレンダーのことです。
ブレンダーは、たくさんの原酒をブレンドして、一定の味を再現することがその仕事。そのため、自分の感覚を鈍らせないために、一定のリズムで生活し、毎日昼食は同じ天ぷらそばを食べている、とのことでした。

多少極端な例ではあるかもしれませんが「自らを一定に保つことが、一定の判断・一貫性につながる」という意味では、学ぶものがあるのではないでしょうか。不快感を感じていると他人をより強く罰してしまうなら、その不快感を極力排除する。体調を管理する、ということは一定の合理性があるように思えます。

体調やリズムの乱高下は、単純に自身の生産性を悪化させるだけでなく、判断をブレさせ、ひいては他者から見た一貫性≒リーダーシップへの信頼を弱めている、と思えば日頃の健康管理により一層気をつけようと思えてきます。良い体調・一定のリズムは、影響されやすくブレやすい私達の、少しでも強い土台をなすもの、と言えるのではないでしょうか。

【参考文献】

  • 説得とヤル気の科学——最新心理学研究が解き明かす「その気にさせる」メカニズム、Susan Weinschenk著、武舎広幸、武舎るみ訳、オライリー・ジャパン
  • Ackerman, J. M., Nocera, C. C., & Bargh, J. A. (2010). Incidental haptic sensations influence social judgments and decisions. Science, 328(5986), 1712-1715.
  • Strack, F., Martin, L. L., & Stepper, S. (1988). Inhibiting and facilitating conditions of the human smile: a nonobtrusive test of the facial feedback hypothesis. Journal of personality and social psychology, 54(5), 768.

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祐司 佐久間
祐司 佐久間
Watson Wyattにて人事コンサルタント、面白法人カヤックの人事チームリーダーを経て現在は大学院で心理学を専攻中。 「データに基づいた人事」をテーマに、ウェアラブル端末やビッグデータ、生理情報、バイオフィードバックなどの切り口からこれまで企業では用いられていなかったデータを組織に活かす方法を模索している。

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