二毛作人生の効用

人間力
  • マスコミから銀行への大方向転換
  • 人生二毛作で実り豊かに
  • 人と人の化学反応が組織を活性化させる

Thoughtful businessman

マスコミから銀行への大方向転換

私は大手都市銀行で主に国際業務を担当した後、系列のリース会社やファイナンス会社の役員を務めてきましたが、もともと大学を出て最初に就職したのは、金融とは全く異なるマスコミ業界、大手新聞社でした。経済記者や海外特派員を務め、それなりに充実した記者生活を送っていました。

記者生活が10年ほどたった頃のことです。世の中はバブル経済の最盛期で、銀行業界も業績拡大やIT化への対応から人手が不足し、1970年代後半の石油ショック後の採用絞り込みによる年次のアンバランス是正の必要もあり、初めて中途採用に踏み切りました。保守的の代名詞のような銀行が純血主義に別れを告げたとして、当時大きな話題となりました。

大手銀行の募集広告を目にした私は、ほどなくして思い切って応募し、30代前半で金融の世界に飛び込み、今日に至っています。まさに清水の舞台から飛び降りるような大きな方向の転換で、あのままマスコミの世界に留まっていたら、全く異なった人生を送っていたのは間違いありません。

転職に踏み切ったのは様々な事情がありますが、取材対象でもあった金融の世界でぜひ自分の力を試してみたい、たとえて言うと、それまでの記者席からグラウンドに降り立ってみたい、という思いに駆られたことが大きな要因でした。私は今でもその時の決断について振り返ることがありますが、結果的に良い選択であったと思っています。

人生二毛作で実り豊かに

金融の仕事は私に向いていたと思うし、本部、都内の営業拠点のほか、国際金融の中心であるニューヨーク、ロンドンに約9年駐在し、プロジェクトファイナンスや欧米の大企業との取引を担当したのは、実に面白く、充実感がありました。

しかも、マスコミと金融という二つの異なる世界を体験したことは、言わば“二毛作人生”と呼べると思いますが、いろいろな意味で人生を豊かにしてくれました。マスコミ、金融いずれも興味深く、やりがいがあり、社会的意義も大きな仕事であり、まさに人生を通じて2種類の異なる果実を実らせたような気がします。

マスコミで過ごした10年間はその後の銀行員人生にも決して無駄でありませんでした。まず記者として、世の中の様々な実相を見聞し、社会人としての基礎ができました。通常なかなか会うことのできない内外の数多くの企業経営者や政治家、官僚などに会い、生の声を聞くことができたのは貴重な勉強になりました。その過程で身に付いた知識、人の話を聞く力、情報収集力、文章を書くスキルなどは、銀行の仕事でも非常に役立ちました。

人間は一つの世界にずっと留まっていると、物事の見方や発想が固定的になりがちです。それが、別の世界に飛び込むことにより、新たな視点を得て、複眼的に視野を広げることができます。私の場合、マスコミの現場を体験したことは、様々なニュースを深読みするのに役立っています。

人と人の化学反応が組織を活性化させる

さらに、異なるバックグラウンドの人間がぶつかり合うことで、新たな発想やアプローチが生まれてくるということもあります。個々人のキャリアの変化にとどまらず、あたかも異なる物質を混ぜ合わせると化学反応が起きるように、組織を活性化させる力にもなります。

私のようなマスコミから金融へといった全く異なる業界への転職はそう多くなく、より一般的なのは同じ業界内や取引先など周辺業界への転職でしょう。そうした転職に於いても程度の差はあれ、同様のことが言えるのではないかと思います。

日本では終身雇用制度を背景に、多くの企業が根強い固有のカルチャーを持っているので、同じ業界の会社でも随分雰囲気や物事の進め方が異なるはずです。私自身、勤めていた銀行の合併を通じて、そのことを強く実感しました。同じ業界内や周辺業界との人材の流動化であっても、個人、組織それぞれに変化をもたらし、活性化させる契機になりうるものと思います。

私が現在経営陣を務めるファイナンス会社でも、戦略部門を中心に積極的に中途採用を行ない、他の金融機関などから経験者が集まってきています。彼らは即戦力として活躍してくれるだけでなく、既存のスタッフにも大きな刺激を与え、目の前で化学反応が起きるように、組織全体のパワーアップをもたらしてくれています。(SOOLメディア:結果を出せる変革するリーダーの「実行力」も参考)

日本社会は全体としてまだまだ固定的、硬直的です。かつては純血主義、一枚岩的組織が日本企業の強さの源泉だったかも知れませんが、近年ではある種のよどみを生じさせ、むしろ成長を制約する一因になっているのではないでしょうか。それを言わば撹拌することで、あちこちで化学反応が起き、個人、企業それぞれが活性化され、日本経済全体が元気を取り戻すことにつながるものと思います。

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Wolverine
Wolverine
大学卒業後、新聞社に入り、経済記者、海外特派員として約10年勤務、その間、米国留学。30代前半で大きく方向転換し、バブル経済を背景に初めて中途採用するようになった大手都市銀行に転職。ニューヨーク、ロンドン駐在、都内の営業拠点長などを経験、プロジェクトファイナンス、国際金融、大企業取引などに携わる。その後、系列の上場リース会社役員を経て、現在は関係ファイナンス会社副社長。国際人材育成を後押しすべく、日米教育交流事業を推進する公益財団の役員も務める。

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