- よく聞かれる質問「挫折経験」
- 「挫折経験」などなくても活躍できる
- 昔は良かった
- 負けることができる人が活躍する時代<
よく聞かれる質問「挫折経験」
採用面接でたまに聞かれる質問に「挫折経験を教えてください」というものがある。私が最初に入ったリクルートでも「挫折経験がある人を採れ」と言われていた。挫折経験が人を成長させるのかなと思い、あまり疑問も持たずに言われるがまま、自分も面接で聞いていた。
しかし、実はずっと黙っていたが、自分には特に挫折経験と呼べるようなものは、正直に言うと、ない。
そのため、変な「劣等感」を感じていた。挫折経験がないから、ある人よりも弱いのではないか。今後自分の未来に訪れる「逆境」を乗り越える力を持てていないのではないか。実際、入社当時の会社のスタープレイヤーを見ると、結構大変な修羅場の人生を送っている方がいた。やはりそうなのか、自分には挫折経験が、ない。だからダメかもしれない。
「挫折経験」などなくても活躍できる
だが、20数年社会人人生を送って振り返ってみると、実態は異なっていたように思う。
まず、自分は相変わらず大した挫折経験もなく、普通に暮らしているが、人並みには仕事をして成果を挙げてきたと思う。ブレイクしているとはまだまだ言えないが、起業も経験し今のところ順調に成長している(あくまで今のところ)。
昔採用に関わった人々も、時が経って世の中にどんどん出てきているが、彼らが全員「挫折経験」を持っていたかというと、大半がそうではない(知らないだけかもしれないが、リクルートの採用はかなり深い話を聞くので、大きな事件があったならたいてい知っているはず)。
起業をして上場を果たした人、政治家になって活躍している人、会社の中核で出世街道まっしぐらな人・・・たくさんのいわゆる「成功者」を見てきたが、むしろ、すくすくと育ってきたような人が多い。
別に「挫折経験」など、成功の必須要件ではないのは明白だ。
昔は良かった
おそらく、時代がやや変わったのだと思う。
戦後の高度成長期などは、日本は目指すべき方向は決まっていて、先進国の勝ちパターンを真似して頑張っていればよかった。勝ちパターンがあるのであれば、後は頑張るだけ(それが難しいのだが)。頑張れば報われる程度も今よりももっと高かったことだろう。
そういう環境において、「挫折経験」のある人達が本領を発揮したのかもしれない。
「挫折経験」は人を深く傷つける。劣等感を持つ。弱い存在になる。その弱さを補強するために、頑張って他者の承認を得ようとする。認めてもらおうとする。ある種の営業職などは典型的な適職だろう。商品は決まっている。ターゲットもわかっている。後はどれだけ徹底するか、やりきるか。そんなゲームでは「挫折経験」のある人は、勝ち負けがはっきりとわかる勝負において、絶対に勝とうとして頑張る。もうあの「挫折」は二度と味わいたくない。
負けることができる人が活躍する時代
しかし、現在はどうか。確固たる「勝ちパターン」のある領域はどんどん消失してきている。何をすれば勝てるのか、誰にもわからないし、「1勝9敗」を恐れずに試行錯誤してどんどん進んでいかないといけない。
ところが「挫折経験」のある人は、もしかすると「9敗」している間に潰れてしまうかもしれない。負けが込んでもいちいち落ち込んでいてはダメな今の世なのに、勝てずに、評価されずに、承認されずにいるのでは、エネルギーが持たない。もちろん今でも「勝ちパターン」がある仕事はたくさんある。彼らはそういう仕事を選ぶことで日の目を見るはずだ。
一方で、「挫折経験」のない人は、他者の承認欲求が相対的に弱いように思う。誰かに評価されるから、ではなく、自分が面白いと思うから、大切だと思うから、信じるものに適合しているから、頑張るのだ。市場や顧客に「合わせよう」として真に新しいものは生まれない。
そういう「すくすく」育った人こそ、実はたくさん負けることができるのではないか。自分の信じた道を進んでいくのに、「9敗」してもまだ立ち上がることができる。正解のない世の中で、新しい事業や商品・サービスを開発するような人は、負け続ける力が必要だ。
そんな今の世の中は、ポジティブで、世界に対して基本的な信頼感を持っている(頑張れば報われる、人は信じるに足るものである、等)「すくすく」育った人が活躍しやすいのではないだろうか。「挫折経験」がない彼らを、見逃していてはいけない。
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